
俳句の作り方を
やさしく順番に
季語・五七五・切れ字・推敲まで
最初の一句を作りながら覚える完全ガイド
「俳句を作ってみたいけれど、何から始めればいいの?」という方へ。まずは難しい理論を全部覚える必要はありません。
初心者は、①目の前のものを一つ見つける → ②季語を一つ選ぶ → ③五・七・五を目安に声に出して整える、この順番から始めると取り組みやすくなります。
まずは、この3つだけ覚えればOK
1. 見つける 今日、目に入ったものや聞こえた音を一つメモします。
2. 季語を選ぶ その場面に合う季節の言葉を一つ選びます。
3. 声に出す 五・七・五を目安に、自然に聞こえるよう整えます。
初めて俳句に触れる方にも分かりやすいよう、基礎用語や作り方を順番に整理しています。この記事内の「編集部作例」は、作り方を説明するために俳句びと編集部が作成した例句です。
もくじ
3分で最初の一句を作ってみよう
最初から上手な句を作ろうとすると、手が止まりやすくなります。まずは次の型を使って、一度最後まで作ってみましょう。
初心者向けの型
[5音の季語]+[7音の場面]+[5音の動き・様子]
例:春の風(5音)/秋の風(5音)/冬の朝(5音)
「スマホを閉じて」「レジ袋鳴る」「改札抜ける」など、具体的な場面を置きます。
文字数ではなく、声に出したときの「音」で数えます。
俳句びと編集部の作例
春の風 スマホを閉じて 空を見る
秋の風 レジ袋鳴る 帰り道
冬の朝 改札抜ける 息白し
俳句の基本形は「五・七・五+季語」
伝統的な俳句の入門では、まず五・七・五の17音と季語を基本形として覚えると分かりやすいです。ただし、俳句には字余り・字足らず、無季俳句、自由律俳句などもあります。最初は基本形から練習し、慣れてからさまざまな表現に触れていきましょう。
| 項目 | 俳句 | 川柳 | 短歌 |
|---|---|---|---|
| 基本の音数 | 5・7・5 | 5・7・5 | 5・7・5・7・7 |
| 季語 | 伝統的には重視される | 必須ではない | 必須ではない |
| 特徴 | 季節・切れ・省略などを生かす | 人事や機知なども広く扱う | 31音で幅広い題材を詠む |
※俳句と川柳は「題材」だけではきっぱり分けられません。どちらも人間や社会、自然を扱うことがあります。初心者は、まず「季語を生かす俳句」と「季語を必須としない川柳」という違いから理解すると整理しやすいです。
季語は「季節を一言で連れてくる言葉」
季語(きご)は、季節の景色や暮らしを短い言葉に凝縮したものです。意味や季節を調べるときに使う本や辞書が歳時記(さいじき)です。
季語は、実際の気温やカレンダーの感覚と俳句上の季節がずれることがあります。たとえば西瓜は初秋として扱われる代表例です。新年の季語も、冬とは別に「新年」として分類されます。
初心者が使いやすい季語と音数
| 季節 | 季語 | 音数 | 使う場面の例 |
|---|---|---|---|
| 春 | 桜(さくら) | 3音 | 花見・学校・散歩 |
| 春の風 | 5音 | 窓辺・外出 | |
| 菜の花 | 4音 | 黄色い野辺 | |
| 鶯(うぐいす) | 4音 | 鳥の声 | |
| 卒業 | 4音 | 学校・別れ | |
| 夏 | 梅雨(つゆ) | 2音 | 雨・湿気 |
| 蛍(ほたる) | 3音 | 川辺・夕暮れ | |
| 向日葵(ひまわり) | 4音 | 強い日差し | |
| 夕立(ゆうだち) | 4音 | 急な雨 | |
| 冷奴(ひややっこ) | 5音 | 食卓 | |
| 秋 | 紅葉(もみじ) | 3音 | 色づく木々 |
| 名月(めいげつ) | 4音 | 秋の月 | |
| 秋の風 | 5音 | 涼しさ・夕暮れ | |
| 虫の音(むしのね) | 4音 | 夜の虫の声 | |
| 西瓜(すいか) | 3音 | 俳句では初秋 | |
| 冬 | 雪 | 2音 | 雪景色 |
| 冬の朝 | 5音 | 冷えた朝 | |
| 手袋 | 4音 | 外出・通勤 | |
| みかん | 3音 | 食卓・こたつ | |
| 年の暮 | 5音 | 年末 | |
| 新年 | 初日の出 | 5音 | 元日の朝 |
| 初詣(はつもうで) | 5音 | 神社・寺 | |
| お雑煮 | 4音 | 正月の食卓 | |
| 書初(かきぞめ) | 4音 | 新年の筆 | |
| 年賀状 | 5音 | 正月の便り |
覚えておきたいこと:季語が二つ入る「季重なり」が必ず誤りというわけではありません。ただ、初心者のうちは主役がぼやけないよう、まず一つに絞ると作りやすくなります。
五・七・五は「文字数」ではなく「音数」で数える
俳句では、見た目の文字の数ではなく、声に出したときの音(モーラ)を数えます。迷ったら、ゆっくり指を折りながら読むと分かりやすいです。
| 種類 | 数え方 | 例 |
|---|---|---|
| 普通の仮名 | 1文字で1音 | さ・く・ら=3音 |
| 小さい「ゃ・ゅ・ょ」 | 前の音と合わせて1音 | チョ=1音 |
| 小さい「っ」 | 1音 | き・っ・て=3音 |
| 「ん」 | 1音 | ほ・ん=2音 |
| 長音「ー」 | 1音 | コ・ー・ヒ・ー=4音 |
よく迷う言葉
チューリップ=5音 / 向日葵(ひまわり)=4音 / コスモス=4音 / 運動会=6音 / マフラー=4音 / 初日の出=5音
字余り・字足らずがあるからといって、すぐに間違いになるわけではありません。定型から外れる表現も俳句にはあります。ただし、初心者は一度五・七・五に整えてみることで、言葉を削る感覚やリズムを身につけやすくなります。
何を詠めばいい?「写生」で素材を見つける
俳句で何を詠むか迷ったときは、まず目の前をよく見る方法があります。近代俳句では、正岡子規が写生を重視しました。俳句の作り方は写生だけではありませんが、初心者が具体的な言葉を見つける練習として、とても役立つ考え方です。
「気持ち」から「見えたもの」へ
「きれいだった」→ 何色だった? どこにあった? 何が動いた?
「寒かった」→ 息は白かった? 手はどこにあった?
「うれしかった」→ 思わず何をした? 誰がいた?
感情を俳句に入れてはいけない、という意味ではありません。最初の練習では、感情をそのまま説明するより、その気持ちが伝わる景色や動作を一つ置くと、読み手が想像できる余白が生まれやすくなります。
素材メモは、一句にしなくてOK
- 洗濯物の影が長い
- 湯のみから湯気
- 駅のホームで蝉の声
- 落葉が玄関まで入ってきた
こうした短いメモをためておくと、あとから季語と組み合わせやすくなります。
切れ字と取り合わせは「次の一歩」
一句作れるようになったら、切れ字や取り合わせを少しずつ試してみましょう。どちらも必須ではありません。
切れ字「や・かな・けり」
切れ字は、句の流れを切ったり、詠嘆や余韻を生んだりする働きを持つ言葉です。入門では「や」「かな」「けり」を知っておくと理解しやすいです。
古池や 蛙飛びこむ 水の音
――松尾芭蕉
「や」で大きく切れることで、古池の景と、その後の蛙の動き・水音が響き合います。
取り合わせと一物仕立て
取り合わせは、二つの異なる素材を一句の中で響き合わせる作り方です。
一物仕立て(いちぶつじたて)は、一つの季語や対象を中心に、そのものの姿や変化を掘り下げる作り方です。どちらが上というものではありません。
一句を作って推敲する5ステップ
壮大な景色でなくても、台所・散歩道・駅・庭で十分です。
歳時記で意味と季節を確認します。
最初から完璧な五・七・五を目指しすぎず、場面が分かる言葉を並べます。
「うれしい」「きれい」「〜だから」など、景色だけで伝わる部分がないか見直します。
リズム、同じ音の重なり、言いにくいところを確認します。
投稿前の5秒チェック
□ 季語の季節は合っている?
□ 主役が二つ三つに分かれていない?
□ 説明しすぎていない?
□ 声に出したとき自然?
□ 一晩置いたら削れる言葉はない?
初心者がつまずきやすい4つのポイント
1. 感想を全部書いてしまう
「きれい」「楽しい」と言い切る前に、その気持ちを生んだ物・音・動きを一つ探してみます。
2. 一句に情報を詰め込みすぎる
場所・人物・気持ち・理由を全部入れず、「何を一番見せたいか」を一つ決めます。
3. 季語を実際の月だけで判断する
季語の季節は歳時記で確認します。西瓜が秋、新年季語が冬とは別区分になるように、日常感覚と異なる例があります。
4. 難しい言葉を無理に使う
俳句だからといって古語ばかり使う必要はありません。普段の言葉でも、具体的な景色が見えれば一句になります。
「新しい言葉=新しい季語」ではありません
スマホ、配信、リモートなどの現代語は俳句に使えますが、それだけで季語になるわけではありません。季語かどうかは歳時記で確認し、現代語は季語と取り合わせる素材として使うと安心です。
名句から「省く力」を学ぶ
名句を書き写すと、季語の置き方、切れ、言葉を言いすぎない感覚がつかみやすくなります。
古池や 蛙飛びこむ 水の音
松尾芭蕉
古池の静けさを説明せず、水音との対比で感じさせます。
春の海 終日のたり のたりかな
与謝蕪村
ゆったりした音の運びそのものが、春の海の穏やかな動きを伝えます。
柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺
正岡子規
柿を食べる身近な感覚と鐘の音を取り合わせ、場所と季節を印象づけます。
縦書き・横書きはどちらでもOK。応募時は要項を確認
俳句は伝統的に縦書きで書かれることが多い一方、WebやSNSでは横書きも一般的です。普段の練習では、読みやすい方法を選んでかまいません。
| 迷いやすい点 | 考え方 |
|---|---|
| 句読点 | 伝統的な表記では使わないことが多いですが、絶対的な禁止ではありません。 |
| 上五・中七・下五の空白 | 作品では続けて書くことも多く、Webでは読みやすさのため空白を入れることもあります。 |
| 俳号・氏名 | 句会・大会・投稿先ごとの指定に従います。 |
| 応募作品 | 縦書き・横書き、表記方法、未発表条件など、必ず応募要項を確認します。 |
俳句の作り方でよくある質問
まとめ|最初の一句は「見る・選ぶ・読む」から
俳句の作り方を一度に全部覚える必要はありません。まずは、目の前の場面を見る、季語を一つ選ぶ、声に出して整える。この3つから始めてみてください。
今日の一歩:窓の外、机の上、帰り道のどこか一か所を見て、一つだけ言葉にする。
そこに季語を一つ添えるだけで、最初の一句の材料がそろいます。
・一般社団法人 現代俳句協会「俳句入門」「初心者講座」
・季語と歳時記の会「季語と歳時記」
・国立国会図書館・レファレンス協同データベース(正岡子規と写生に関する資料案内)











